1オーディション企画書
タイトル
溺れた記者の戦場
サブタイトル
アルコール依存症——アフガン、イラク、そして精神科病棟へ
著者略歴
ライター、元新聞記者。コソボ紛争時のアルバニア、アフガニスタン、イラクなど、各地の紛争・戦争を取材してきた。エース記者だったわけではない。むしろ、上司の評価は低かった。それでも、紙面では書けないことがたくさんあった。その一つが、自らのメンタル疾患だった。これを公にするまでには、とてつもなく長い時間と覚悟が必要だった。
アルコール依存症——。ひと昔前なら「アル中」と蔑まれた病である。「だらしがない」「意志が弱いからだ」「怠け病」。さまざまなレッテルを貼られる。30代後半で、この物語の主人公である「ぼく」は、専門医からアルコール依存症と診断された。やがて仕事も家庭も生活もままならなくなり、当時、国内でも数少なかったアルコール依存症専門病院に入院することになる。
「ぼく」はもともと酒に弱く、ほとんど飲めない体質だった。大学生時代から30代前半まで、酒を飲めば寝るか吐くかのどちらかだった。そんな人間がなぜ、依存症になったのか。戦場取材のストレスだろうか——いや、違う。
確かに戦場では、命の危機に直面した場面も何度かあった。日々抱えるストレスもあった。しかし、戦場にしかない緊張感と同時に、ぼくは高揚感と充実感を覚えていたのだ。依存症が悪化したのは、むしろ、銃声のない安全な日本に帰国してからだった。
うつ病も合併した。「消えて無くなりたい」と何度も思った。どん底まで落ちた自己肯定感。いてもいなくても、どうでもいい人間、いや、むしろいない方がいい人間——そう思っていた。
長い間、不眠症にも苦しんだ。睡眠薬なしでは、一睡もできなかった。これまで最長、11日間連続でほとんど眠れなかったこともある。この症状は今も続いている。
これらの病が原因で、ぼくは新聞社を早期選択定年退職した。
その後、53歳で初めて父親になった。現在は小学2年生の娘を育てる父でもある。依存症の自分が、果たして父になって良かったのか。娘が「おとうさん、大好き」と言ってくれるたび、そう自問を繰り返しながら生きている。答えはまだない。2026年8月現在、61歳。
何のための本か?
本書は、アルコール依存症を「意志の弱い人間がなる病気」だと思っている人に、その認識を改めてもらうための本である。そして、依存症に苦しむ当事者や家族に、回復は一直線ではなくても、生き続ける道はあると伝えるための本である。
取材する側だった者が、ある日「取材される対象」になる。
ぼくが入院したのは、芸能人のアルコールやギャンブル依存、薬物依存問題がワイドショーを賑わせたり、摂食障害や窃盗症(クレプトマニア)などのメンタル疾患が取り上げられたりする際、院長がよく登場するような病院だった。
入院中にライバル紙の記者が取材や講演に訪れたこともある。なぜぼくは、取材される側の患者だったのか。なぜ演壇で話す彼はスーツ姿で、それを聞くぼくはジャージー姿だったのか。やるせない思いを抱いたこともある。
主な治療の場である「ミーティング」。そこで交わされる、さまざまな背景を抱えた患者仲間たちの言葉や体験。ミーティングで語られた内容を外に持ち出さないことが原則だったが、本書ではその原則を踏まえ、個人が特定されないよう十分に配慮して記述した。
声を上げて言う。アルコール依存症は意志の弱さが原因では決してない。自分の力だけでは太刀打ちできない、手に余る病なのである。本書は、回復に終点はないという現実を受け止め、それでも「生き延びる」ための戦いを続ける一人の人間の記録である。
企画意図・趣旨
アルコール依存症を描いた闘病記は数多くある。それでも本書を書きたいのは、同情や言い訳を求めるためではない。取材する側だった記者が患者となり、依存症専門病院の治療体制や病棟生活、ミーティングで交わされる言葉を、当事者の目と記者の目の両方から記録するためである。
繰り返し強調するが、依存症はいまだに「意志が弱い」「だらしない」という個人責任論で語られがちだ。しかし、依存症は意志の弱さで説明できる病ではない。
だが、適切な治療や支援を受けながら回復していくことは可能なのである。
最新の全国調査では、日本で生涯にアルコール依存症が疑われる人は約64万人、過去1年間にアルコール使用障害が疑われる人は300万人を超える(出典:令和6年度 依存症に関する調査研究事業『飲酒と生活習慣に関する調査』報告書、2026年)。
依存症は決して一部の特殊な人だけの問題ではない。本書は「治療を受けて回復しました」という成功譚ではない。断酒と再発を繰り返しながら、それでも生き続ける人間を描く。
外の戦場を取材してきた記者が、やがて自分の内側にある戦場と向き合う。その記録を通して、依存症とは何かを読者とともに考えたい。
読者層
・依存症当事者とその家族・周囲の人
・いわゆる「機能不全家庭」で育った人
・医療・福祉・教育関係者
・働きながらメンタルヘルスの問題を抱えている人
・依存症や精神疾患について理解を深めたい一般読者
・メンタル疾患患者に偏見を抱いている多くの人
類書
▽吾妻ひでお『失踪日記2 アル中病棟』(イースト・プレス、2013年)
▽小田嶋隆『上を向いてアルコール——「元アル中」コラムニストの告白』(ミシマ社、2018年)
▽中島らも『今夜、すべてのバーで』(講談社、1991年)
▽町田康『しらふで生きる 大酒飲みの決断』(幻冬舎、2019年)など。
類似書との相違点
『失踪日記2 アル中病棟』をはじめ、アルコール依存症患者が精神科病棟での体験を描いた作品や、断酒に至る過程をつづった当事者の著作は少なくない。
しかし本書は、イスラム教では飲酒が禁じられているにもかかわらず、アフガニスタンなどの取材先でさえ酒を求めた「ぼく」が、酒への依存を深めていく過程から、帰国後の依存症の悪化、社会への不適応、精神科病棟への入院、断酒と再発までを描いている。
依存症は一度治療すれば終わる病ではない。それが現実なのだ。
しかし、絶望で幕を閉じることはしたくない。
「戦場」はそれまで、自分の外で起きる戦いの舞台だった。だが、戦場はやがて自分自身の内側へと移っていく。本書は当事者の生活感覚と制度、あるいは「ふつうの人」の考え方との隙間を具体的に描くことで、偏見や誤解を少しでも減らすことを目指した。
これは啓発本ではない。理解するための記録である。
この本が売れるためにご自身ができること
とにかく書き続けることである。現在、noteを中心に連載を続けており、今後も継続して発信することで読者を増やしていく。Facebook、X、Instagramでも記事を紹介し、新たな読者層への浸透を図る。
さらにYouTubeチャンネルを開設し、アルコール依存症の当事者としての経験や、新聞記者として戦場を取材した経験、本書の背景について発信したい。同じ境遇、似た境遇で苦しむ人々に届く、当事者ならではの説得力のあるメッセージを伝えていく。
出版後は、もし機会が与えられるならば、依存症、メンタルヘルス、ジャーナリズムなどをテーマとした講演やトークイベントにも可能な限り参加したい。本書だけで終わらせず、30年間の記者生活で得た経験を生かし、異なるテーマの作品も継続して発表することで、長期的な読者基盤を築いていく。
追記:編集上の留意点
・実名・固有情報には十分配慮している。
・医療描写は体験の範囲にとどめ、治療法の断定的評価は行っていない。
・自殺・自傷に関する描写は、必要最小限に抑えている。
・使用する写真は、使用権限を確認できる自己撮影写真に限る。